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2024AW MILANO UNICA REPORT
世界最大規模の生地展示会であるMILANO UNICA(2024秋冬シーズン向け)に行ってきました。
コロナ禍では出展を控えたりコレクションを絞っていたメーカーも多かったですが、今回はコロナが明けたこととスーツスタイルに適した秋冬シーズン向けということもあり、各メーカー非常に力の入ったコレクションを展開していました。来場者も多く賑わいを取り戻していましたが、コロナ前に非常に多かったアジアのバイヤー(中国や日本、韓国)はやや少なかった印象です。8月末に日本でもMATSUKI展示会としてインポートメーカーの展示会を開催するので、数十社にもなる各メーカーとは今回もしっかりと打ち合わせをしてきました。
エネルギー問題についてはある程度の見通しが立つようになり、前シーズンのような季中値上げやサーチャージ別途という前代未聞のプライス設定はほとんどのメーカーで無くなりました。ただし原料、生産、貿易どの部分を切り取ってもコストが上がってきてしまっているうえに円安も重なり、残念ながら生地値が安くなったという感覚は得られませんでした。その分は納得できる価値のあるものをいかに提案できるかが勝負になりそうです。
24AWの打ち出しとして各社一番目立っていたのは<ヴィンテージルック>のコレクションです。近年はヴィンテージミックスのようなコーディネートへの注目が高まっており、市場の盛り上がりともリンクするものでした。クラシカルな英国トレンドの流れから、一歩踏み込んだヴィンテージルックに進んだような印象です。太めの糸を使用したしっかりとした素材や複数のカラーをミックスした杢糸の素材がその中心になっていましたが、24AWらしいヴィンテージルックは洗練さを加えたものがポイントになりそうです。ただ生地が厚いものや杢糸使いではかなり渋く古い印象になってしまうので、色使いや柄、フィニッシングなどMATSUKIらしい工夫を加えたものを来季コレクションに組み入れていきたいと思っています。
カラーは深みのあるグレーが中心になりそうです。ホワイト系やパープル、グリーンも24SSから継続して提案が多かったです。特にホワイトフランネルには注目しています。24SSのときもそうでしたが(リネンなど)、季節を感じさせる素材感というのは一つのキーワードです。その代表的なものとしてフランネルやブークレ素材が目立っていました。
今回はジャケット素材やコート素材の提案が多かったことも特徴の一つで、理由を聞くと欧米ではジャケットやコートの売れ行きが好調で素材の受注もかなり増えているからとのことでした。イタリア出張中に私たちが現地のレストランに行くと、真夏はイタリア人でも流石にジャケットを着ていない方も見かけますが、それ以外のシーズンでは装いのマナーとしてどの方もジャケットを羽織っていて、こういった部分はとても美しいと感じます。人々の往来が完全に戻った欧米では、ジャケットが売れるというのは必然なのかもしれません。
最後にもう一つ感じた点は、メーカーブースの人気格差です。近年の消費傾向は<本物志向>がより高まっていると感じていますがこれはその表れであると思います。メーカーとして高いクオリティと歴史を誇るTALLIA DI DELFINOやErmenegldo Zegnaのブースは連日超満員でした。またORIGINALと言われるような究極の定番素材を持っているFox Brothersなどのメーカーも賑わいを見せていました。質の高い情報を集ることが出来て、より多くの選択肢から選べるようになった現代では中途半端なものは売れないという傾向は我々としても強く感じています。<本物志向>は元々私たちのテーマの一つでもあるので、メーカーとの強固な関係性を今後も大切にしながら、見せかけではない<本物の生地>を編集・開発していきたいと考えています。
MATSUKIの24AWコレクションでは、オーダーアイテムをより堪能して頂けるような特別な素材をたくさん揃えていく予定ですのでぜひ楽しみにしていてください。
そんな先まで待てない方にお知らせ致します。お盆前後からMATSUKIの23AWコレクションが全国で展開スタートします。スペシャルなインポート素材や国産素材も盛り沢山ですので、お近くのオーダーショップやMATSUKIのシュミレーションサイトでぜひチェックしてみてください。
Words: Takuya Ito